読むことと書くこと

前回のブログは、長いですね。
書いている当人がそう思っています。これはいけません。
今はスピードの時代、とつくづく思います。医学部英語の入試問題を見ていてもそうで、じっくりと考えさせる問題は少ない。もちろん思考力は必要ですが、限られた時間内で効率よく考えることが求められます。
入試担当者が求める資質の一つは、速さ。この状況下で「スピードも大事」と生徒に伝えていると、自然、私も「スピード大事」の価値観に染まって来ます。仕事のメールが長いと嫌だなと思う。儀礼的な挨拶はいいから結論だけを言って、と。日常生活もスピード偏重で、ネットで買えるものは必ずネットで買う。大半の小売店では携帯内の電子マネーで決済しますし、そのマネーもクレジットカードでチャージできるようになりました。
こうなると現金をあまり使わないので、カードが使えないお店で、現金を出すのが面倒くさい。電子マネーなら数秒速く決済できるのになぁ。そのわずかな差が気になる。もはや病気だと思います。そうして捻出した時間で何をするか、と言えば、また別の用事を入れて根詰めているのですから、何が目的で何が手段か、ワケが分からなくなっている。
そうしてスピード狂と化しつつあるわたくしですが、ブログは長いですね。。
なぜか。
書くことを通じて、考えたいのです。いちおう読む人は意識していますが、半分くらいは自分の思考を整理するために書いている。そんな自己都合の文章に付き合って下さる読者がいるとすれば、もちろん有難いことです。
ブログを書くことは、手間がかかります。しかしこの一連の作業を通じて得られる情報や思考の整理、自分の言葉にすることによる血肉化は大きい。手間をかけることがブログを書く目的の一つなので、どうも長くなってしまう。
議論をしても「思考」は生じますが、これには相手が要る。社会人になると、友人を捕まえて議論するのも難しい。という訳で、私の場合はもっぱら妻に「貴女はどう思う?」と話を振ることがよくありますが、これが、とても面白い。もともと赤の他人ですし、性格も考え方も私とは全く違うので、自分と異なる視点が必ずあります。
でも、受験生は、議論する時間は中々とれません。であれば、書くしかない。読むことと、書くこと。当予備校では、特に前期のうちは、英語の長文を読んだ上で、それを要約したり、自分の意見を書いたりする機会を多く設定しています。そういった、国語、あるいは小論文的な力は必ず入試での得点力につながります。
母国語の読み書き能力が大事。これは英語科の私だけでなく、数学科や理科の先生方とも共有している認識で、慶応進学会フロンティアの「イズム」の一つ、と言って良いと思います。また我々予備校講師だけでなく、大学人もおそらく同じ考え方をしているはずです。ちなみに村岡洋一さん(東京通信大学学長・専門は情報工学)が先日、下記の内容を新聞の取材で答えていました↓
「私は、これからの時代に向けて小学生が最も学ぶべきは、国語だと思っています。自分の考えを論理的に伝える能力、人の意見を的確に聞く能力を幼いうちに養うことが何より重要だと思うのです。
記憶力の学問と言われる理科や数学も、実は国語力をベースとした類推力や問題解決力が不可欠で、それがあって初めて汎用性のある知識や実践につながります」
「思考力」とは何か。定義は様々かもしれませんが、入試で求められる最大の能力であり、それを鍛える最もベーシックな方法は、読むことと書くことだと私は考えます。
次の引用は、カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した是枝監督の言葉↓
「僕は意図的に長い文章を書いています。これは冗談で言っていたんだけど、ツイッターを140字以内ではなく、140字以上でないと送信できなくすればいいんじゃないか。短い言葉で『クソ』とか発信しても、そこからは何も生まれない。文章を長くすれば、もう少し考えて書くんじゃないか。字数って大事なんですよ」(是枝監督は以前から、現代のメディアが陥りがちな『分かりやすさ至上主義』に警鐘を鳴らしていました。彼の映画も、説明し過ぎないことが一つの特徴のようです)
動画を含め、ネット発の情報は、分かりやすいことがトコトン追求されています。これは基本的に素晴らしいことですが、あまりに「分かりやすい」ものばかりに接していると、情報を咀嚼するアゴの力は、衰えます。それはそのまま、学校の授業を理解する力が衰えることを意味しますし、まして医学部の入試英語は読み解けません。
少しくらい分かりにくくても、何度も何度も読んで意味を汲み取ろうとすること。
そういった、旧世代の受験生にとっては当たり前だった習慣を、物心ついた時からウェブ情報に囲まれていた世代は持っていないのかもしれない。そう思うことがあります。
まずはしっかり、読むことから。それが、聴く力にも、書く力にもつながります。
勝負の夏。夏は毎日、長文を読んで下さい。音読も忘れずに。

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